水戸地方裁判所 昭和44年(レ)2号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(原審差戻申立についての判断)
控訴人は、原判決は控訴人の予備的申立に対する判断を逸しており、原審に差戻されるべきであると主張する。
本件記録によれば、控訴人が原審第二一回口頭弁論期日において陳述した昭和四三年一〇月二日付準備書面には前記の如く被控訴人に対し茨城県知事の農地法所定の許可手続をとり、右許可のあつたときは(従前からの第一次的申立としての水戸地方法務局矢田部出張所昭和三七年五月一九日受付第五九七号をもつてなされた同日付売買契約を原因とする所有権移転仮登記にもとづく本登記手続の請求に附加して)予備的申立としてたんに昭和三七年五月一九日付売買契約を原因として所有権移転登記手続をすることを求める旨記載されていることが明らかであるが、原判決はその判決書によれば右にいわゆる第一次的請求についての判断を示したのみで右にいう予備的申立についてはこれを別個の請求として扱つた形跡のないことが認められる。
ところで、控訴人の右第一次的請求と予備的請求とするところは、まず仮登記にもとづく本登記の請求をし、仮に右仮登記が無効であれば、右仮登記にもとづくことなく、たんに同じ売買契約を原因として所有権移転登記を請求しようとするものであることは明らかであるところ、本件口頭弁論の全趣旨に徴すれば控訴人の主張するところは、究極において昭和三七年五月一九日の売買契約により本件土地所有権を県知事の許可を停止条件として取得しうべきことを前提として、右許可のうえは現在の権利関係に符合すべき登記をすることの協力を請求しているものである。従つてこれらの請求はいずれも同一の登記請求権にもとづき、一は仮登記を本登記にすることを、他は右仮登記によらない本登記のみを求めるにすぎず、それぞれ独立の請求ではなく、ただ仮登記にもとづく本登記はしからざる場合に比して順位保全の効果をもつ点で差違があり、いわば前者の方が後者よりその効力が大であるという関係にあり、ひつきよう後者の請求は前者の請求の一部というべき地位にあるものと解するのが相当である。従つて、仮登記にもとづく本登記の請求にあわせて右本登記のみの請求が仮定的になされたとしても、いわゆる訴の予備的併合ではなく、同一の訴訟物についての一部請求が主張されたというにすぎないというべきである。そうとすれば判決においてその各々について各別の判断を示す必要のないことはいうまでもない。本件における如く一の売買契約による所有権取得を前提として、これにもとづき登記請求権を行使しようとしている場合に、右売買契約自体が有効に成立していないとの判断を示したうえで右にいわゆる第一次的請求を棄却している以上、その一部請求とみるべき申立について判断を示す必要のないことは自明である(仮登記のみが手続上の欠缺等の故に無効であるとしてもそのいわゆる第一次的請求が全部棄却されるべきであるかは一の問題であるが、いずれにしても本件はそのような場合ではない)。要するに原判決は、いささか控訴人の主張を十分整理しないきらいはないではないが、結局において控訴人の請求のすべてを棄却する旨宣言し、そのすべてについて終局判決をしているとみるべきであつて、この点で予備的申立がまだ原審に係属しているとか、原判決の手続に違法があるとかは認められない(当裁判所は以上の如く解するが、仮に控訴人主張のとおり右請求の訴訟物が複数であり、予備的併合の関係に立つと解しても、判断の示されていない予備的申立は依然として原審に係属しているのであり、これを理由として終局判決のあつたいわゆる第一次的申立を原審に差戻すべき理由のないことは明らかである)。
結局、控訴人の右差戻申立は理由がなく採用しえない。(浅沼武 土屋連秀 星野雅紀)